牛車で往く

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ねずみ男にはなりたくない(龍谷ミュージアム 特別展「水木しげる 魂の漫画展」)

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京都にある龍谷大学の龍谷ミュージアムにて開催されている「水木しげる 魂の漫画展」に行ってまいりました(詳細はこちら:龍谷ミュージアム 特別展「水木しげる 魂の漫画展」)。水木先生の描くキャラはすごく愛嬌があって、かわいい。口がいいよね、口が。ε になってる口最高。水木先生のエッセイ「ほんまにオレはアホやろか(講談社文庫版)」の表紙めっちゃ好きや。これは口が ε になってないけどもね。例外もあるよね。

 

ほんまにオレはアホやろか (講談社文庫)

ほんまにオレはアホやろか (講談社文庫)

 

 

会場には、小学生からおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い年齢層の人が来ていて、水木しげる先生の人気の高さがうかがえた。基本的に会場内での撮影は禁止で、唯一撮影できるのが入り口のオブジェだった。

 

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展示内容は、プロローグを含めた9つのブースに分かれていて、ボリュームがすごくてかなり楽しめた(会場マップはこちら)。会場内のいたるところには、水木先生が描いたキャラクターのパネルが設置されており、これがかわいいこと、かわいいこと。なんか和むんよなあ、水木先生の絵は。飄々としている感じがいい。

 

それに加えて、展示会場ではおよそ13分のシアターが30分おきに上映されており、講談社の編集担当だった田中利雄氏とアシスタントだった村澤昌夫氏、池上遼一氏が水木先生について語るという内容になっていた。特に池上先生の話が面白かった。アシスタントとして採用されて初めて水木先生に挨拶をしたときに、池上先生は「君は空気の抜けたカステラみたいな声をしているな」と言われたらしい。また、水木先生の漫画の背景は、アシスタントの方が担当することが多かったらしいが、背景を点描で描くときに池上先生はものすごく眠たくなっていたそうだ。そして、それを見た水木先生は「池上君は点描をさせるとすぐに眠ろうとするから、ほかのことをやってもらおう」と。水木先生との仲よさそうなエピソードに和んだ。お三方の語る水木先生のエピソードから、水木先生のおおらかな性格が感じられて良かった。もちろん、池上先生は真面目な話もされており、鬼太郎独特の雰囲気は、背景や効果線などの直線をものさしを使わずに描き、空間をあえて作ることで生み出されていると語っていた。また、緻密な背景に対して、デフォルメの効いたキャラクターを組み合わせるという描き方は、水木先生の発明だとも言っていた。この上映会を最初に見たことで、池上先生が言っていたことを意識しながら展示品を見れたため、より一層楽しむことができた。行かれる方は、一番最初に上映会を見るのがオススメです。

 

第1章の「武良茂アートギャラリー ~少年天才画家あらわる!~」では、水木先生の少年時代の作品がたくさん展示されていた。水木先生が描いた少女漫画タッチの原画があっておもしろかった。水木先生こんなん描いてたんや。ぜんぜん知らなかったぜ。

 

第2章の「水木しげる漫画研究 ~片腕で生み出す独自の画法~」では、水木先生が描いた下書きやラフ画が展示されていたけど、水木プロダクションの当時の募集要項が一番気になった。給料に関しては、絵がうまい人5万円、下手な人は2万円と、なかなかえげつない実力主義社会。給料倍以上変わってくるやん。その他にも、「すぐやめる人はきらいです」と書かれていて、「すぐやめる人は応募しないでください」ではなく、「きらいです」と表記するあたりが、なんか水木先生らしくていいなと思った。嫌われるけど、応募はしてもよかったのかもしれない。

 

第7章の「妖怪世界へようこそ」では、待ちに待った水木先生が描いた妖怪たちの絵が展示されていた。点描で濃淡が表現された緻密な背景から、独特のじめっとした雰囲気が醸し出されており、まさに日本の妖怪という感じがして目が離せなかった。特につらら女の絵の、つららを点描で表現しているものは圧巻であった。絵がものすごくうまいなあ。池上先生の話を聞いてたら、アシスタントの方が描いているのかもしれないけれど。

 

他にも戦争体験を描いた「総員玉砕せよ!」の原画や、この展示会で初公開の虫の絵本(未完の絵物語、これが水木先生の事実上の遺作となったようだ)など、見ごたえのあるものがたくさんあった。水木先生の描く土方歳三や安倍晴明はぜんぜんシュッとしてなくて、逆に人間味にあふれていてよかった。最近のキャラは全体的にイケメンすぎるよね。

 

また会場では、いろんなグッズが販売されており、缶バッチやTシャツ、手ぬぐいなどの展示会限定のものもあった。グッズが当たる500円くじもあり、はずれを引いてもクリアファイルと目玉おやじの絵が描かれた小さなカバンがもらえるという、なかなかにいいくじであった。自分は展示会限定のクリアファイルと、こちらは限定品ではないねずみ男の秘密が書かれたクリアファイルの二つを買った。このねずみ男のクリアファイルが面白い。ねずみ男のことをまあボロクソにこき下ろしている。

 

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ねずみ男の歯はなんでもかみ砕ける強い歯であるが、強い歯があるからいやしくなったのか、いやしいから歯が強くなったのか、そのどちらかは分からないと書いてある。話術に関しては、話術が巧みであるが、それに加えてものすごい口臭だから、相手はたちまち逃げ出してしまうらしい。どんなんやねん。ねずみ男の胃こそホンマに、「胃が腐っとんじゃっ」ってやつよ。

 

展示品もグッズも全部含めて非常に面白かった。それにしても龍谷大学、こんなミュージアムをもっているなんてすごいな。龍谷大生は無料なんだろうか。このミュージアム、基本的には仏教に関する展示が多いようだ。水木先生は地獄や極楽浄土の絵も描いているから、今回の特別展が開催されたのだろうか。なんにせよ、ねずみ男のように臭くならないように、しっかり歯磨きをして寝ることにしよう。なんてったって、口が臭いと会話の途中で相手がたちまち逃げ出してしまうんだから。まだ会話中に相手が逃げ出してその背中を見送ったという経験はないため、自分の口は臭くないと信じたい。