この前、東京に行ってきました。柴崎友香の小説「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」を読んで車に乗って遠出がしたくなり、友だちを誘ってはるばる関西から東京まで行ってきました。
夜中の3時に関西を発つ。出発するときには少し雨が降っており、それに蒸し暑かった。過ごしにくい気候ではあるが、これから向かう東京のことを考えると少し胸が躍った。夜の高速道路を走るのはなんだか楽しい。途中でサービスエリア、パーキングエリアに寄るのも楽しい。なんか枕草子みたいになってしまったけれど、まあそんなことは置いといて、夜の高速はなんであんなにも楽しいのだろうか。旅に来た感が出るからなのか。途中、休憩のために湾岸長嶋パーキングエリアに寄った。
天気予報の通り、湾岸長嶋パーキングエリアに着いたころには雨は止んでいたが、ちょっと前までは降っていたので少し湿気がある。それなのに空気が澄んでいるように思うのは、人が少なく静かな夜中のせいだろうか。ベタにceroの「Orphans」を思い出した。
cero / Orphans【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
この旅行は別に逃避行というわけではないけれど、旅行はいつでも日常から離れて少しの非日常の世界を味わうものではあるため、少しだけこの曲に感情移入する。湾岸長嶋パーキングエリアではおでんを食べた。大根とだし巻き卵。旅行先で食べるご飯は美味しい。非日常感がスパイスとなって幸福な気持ちに満たされる。パーキングエリアに着いたときには空は暗かったのだが、建物から出ると少し明るくなっていた。夏の朝は明るくなるのが早いねえ、なんて思う。そうすると、今まで暗くて見えていなかった長島スパーランドのアトラクションの全貌が見えるようになっていた。で、でかい・・・。ただ、遊びに来た観光客の乗っていない早朝のアトラクションは少し寂しそうであった。そのでかさも相まって。木下龍也と岡野大嗣の共著歌集「玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ」にあった
夜という魔法が終わり肉抜きをされたみたいに見える鉄塔
という短歌を思い出してしまった。
引き続き高速道路を走る。東名高速道路に差し掛かったときに、最近Twitterであったハッシュタグ「#子供の頃の勘違いをあえて言おう」における、東名高速のことを透明高速と思っていたというつぶやきを思い出した。自分は関西出身であり、子供の頃に東名高速という言葉に触れることはなかったため、こんな勘違いをすることはなかったけれど、関東に住んでいたら確実に同じような勘違いをしていたように思う。そんな東名高速をしばし走り、海老名サービスエリアに到着。
ここが噂の海老名サービスエリアか・・・。確かにでかい。二階まである。とりあえず二階へと上がる。二階はフードコートとなっており、そこで朝ごはんにビーフカレーを食べた。さながらイチローでございます。サービスエリアは楽しいと言いながらも、特にすることもないのでグルっと回ってすぐに出発。朝10時ぐらいに東京に到着しました。車をパーキングに止めて新宿へ移動し、お昼ご飯を食べる。その後、渋谷へと移動して、町をプラプラと歩いた。東京に行こうと友達を誘ったのは自分のほうであったのだが、とりあえず車で遠くに行きたかっただけであり、特に東京でしたいことなど何もなかった。そうすると意外とすることが思いつかない。ただただひたすら街を歩き眺めるという時間が続いた。出張や旅行で東京に訪れるたびに、東京という場所に抱いていた特別なイメージが薄れていく。ここもよく見れば、スケールこそ大きいものの、自分の住んでいる街とそんなに変わらないなと思う。何度も来て慣れたということもあるのだろうけれど。それにしても東京に対して"まち"という言葉を使うときは、"町"ではなく自然と"街"のほうを使ってしまう。薄れているとはいえ、いまだに抱いてはいる東京が都会だというイメージ。
なんだか旅感を味わいたくなり、飛行機には乗らないが羽田空港へと向かった。以前にも書いたけれど、空港はいい。
どこか遠くへと旅立つ雰囲気に満たされた空間にいると、飛行機に乗らない自分までもが非日常を感じてしまう。国際線ターミナルの展望デッキで飛行機が飛び立っていく様子をしばしの間眺めた。
もっと間近で眺められると思っていたが、飛行機が飛び立っていく滑走路はデッキから結構離れていて、思っていたよりも飛行機を小さな姿でしか見ることができなかった。それでもこんなに大きなものが空へ飛び立つ様子を見ていると、なにか圧倒された気分になる。間近で見たら、もっと迫力が凄くてエネルギーに溢れているんだろうな。こんなことを思うのも、村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」を読んだ影響であろうか。
空に飛び立っていく飛行機の姿をスマホで撮影したが、まあ何とも小さくて迫力がない。
肉眼で見ているとき以上に距離を感じる。やっぱり何事もライブに勝るものはないなと思いながらも、音楽においてはライブに行くよりもCD音源をじっくり聴く方が自分の性に合っているように思う。それを鑑みると、肉眼で景色を見に行くのと写真集などで景色の写真を眺めるのとでは、それぞれまた違った味わいなんだろうなと思う。それぞれのモード、その時々の気分に合った鑑賞方法がある。
そして、夜からは明治神宮球場へ阪神vsヤクルト戦を観に行った。ぶっちゃけビジターでの試合に応援に行くほど阪神のファンではない。ただ、東京でやることが思いつかずちょうどチケットが取れそうだったため、行こうということになった。明治神宮球場へと向かう電車の中で、阪神のユニホームを着たファンたちと出会う。そしていざ球場に到着しスタンドを見渡してみると、ビジターにもかかわらず阪神ファンがスタンドの半分ぐらいを埋め尽くしている。阪神ファンたちよ、なんて熱心なんだ。ヤクルトのホームやのに応援の数が拮抗しとるやんけ。凄すぎるやろ。ここ東京やぞ。アンタらのせいで全然東京感がないんですわ。すごい関西弁が聞こえてくるんですわ。そういう自分も関西弁で喋っているんですけども。なんてことを思いつつも、やっぱり夏のナイターは楽しい。ワクワクする。席はバックネット裏であり、選手たちの姿がよく見える。阪神の選手よりも、ヤクルトの青木と山田哲人を間近で見れたことに興奮した。ホンマにおるんや。そして、試合開始前にたわむれるトラッキーとつば九郎のツーショットも撮ることができた。
そして、いざプレイボール。一回の表、阪神の攻撃。いきなり福留がツーランホームランを打った。ライトスタンドへと飛んで行ったボールを途中で見失ってしまった。それにしても幸先がいい。いきなり面白い。周りから、今日はもう勝ったという声が聞こえてくる。陽気すぎるやろ。ただそんな喜びも束の間、3回に早々に逆転された。阪神2ー3ヤクルト。阪神ファンも意気消沈。しかし、次の阪神の攻撃である4回表。ワンアウト満塁の状況でバッター高山。ヤクルトのピッチャー田川が投げたボールを高山のバットが捉えた。打球はグングン伸びてセンターの頭上を越え、2点タイムリー。バックネット裏から見ると、ヤクルトのセンターを守っていた青木が後ろに下がっていく姿と、その上を超えていくボールの様子をよく見ることができた。高山すごい。阪神ファン大喜び。高山の前に、大山がノーアウト満塁の状況でバットにボールを1球もかすらせることができずに三振した時には罵声が飛んでいたが、これで一安心。ここで思うのだけれど、自分は球場に野球を観に行くと、試合よりも周りの観客の振る舞いのほうが気になって観察してしまう。隣のおっちゃんの膝が当たるのを気にするおばちゃんや、ただただシンプルに名前を大声で呼ぶという形で選手を鼓舞するおっちゃん、彼氏に連れられてきてあんまり楽しくなさそうな彼女とそんなのを気にせずにめちゃくちゃ楽しそうな彼氏。球場には色んな人がいて、それぞれの観戦の仕方をしている。そしてこの日は夏休みということで、5回が終わった時点でバックスクリーン上空に花火が打ち上げられた。『うわあ、夏っぽくていいなあ。』と思う。それにしても先ほどの飛行機同様、花火も写真で撮ったものを見ると全然綺麗じゃない。その場の空気感が取り払われたら、こんなにもスケールが小さく映るなんて。その後、阪神は得点を重ねて、最終的に阪神7ー4ヤクルトで阪神が勝利した。
東京の夜空に阪神ファンたちの歌う六甲おろしがこだまする・・・。ここは本当に東京なんだろうか・・・。5連勝おめでとう、阪神タイガース。ヤクルトの話題の新人である村上選手や福留のあと三塁打が出ていればサイクルヒット達成といったものが見れて楽しかった。
試合が終わって明治神宮球場を後にする。ナイターを観終わって球場を離れる時は、いつもフワフワとした気持ちになる。さっきまでの試合が夢のように思え、球場に少し体温を置いてきたような気分になる。これは夜の球場を照らすライトの影響のせいな気がする。そして妙にテンションが上がってきたのと同時に、明治神宮球場で阪神ファンたちに囲まれたおかげで東京感を全く味わえていないことから、急遽、夜の東京駅を見に行こうということになった。失われた東京感を取り戻すべく、電車に乗っていざ東京駅へ。夜も遅いため、ほとんど人がいない。夜の赤レンガの駅舎を見る。
そして、その正面に広がるビル群。
これよこれ。この東京感を求めていたのだよ。そして赤レンガの駅舎の近くには東京オリンピックまであとどれくらいかを示すモニュメントが設置されていた。もう1年を切っている。東京オリンピックが開催されているとき、自分はどこでどんなふうな生活を送っているんだろうか。きっとあっという間なんだろうな。そんなことを最後に思い、東京旅行の1日目が終わりました。東京感ってなに?