牛車で往く

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海と友人たちはいっしょ

暇すぎてピンポンを読み直す。

 

ピンポン (1) (小学館文庫 まC 2)

ピンポン (1) (小学館文庫 まC 2)

  • 作者:松本 大洋
  • 発売日: 2012/07/14
  • メディア: 文庫
 

 

相変わらず面白い。ピンポンは漫画、映画、アニメとあるけれど、自分は漫画が一番好きです。とはいえ、映画も面白くて極楽寺の階段でペコが特訓するシーンが特に好きだ。スーパーカーの「Baby Once More」が流れてくるのが最高。

 

 

そして何より、ピンポンは舞台が湘南っていうのがいい。そう言えば、去年のゴールデンウィークに湘南へ観光に行ったときに、小田急電鉄の片瀬江ノ島駅の建て替え工事が行われていたけれど、工事はいつになったら完了するんだったっけ? そう思い調べてみると、外観工事は今年の2月にすでに完了しており、いまはもう駅舎の全貌が見れるようだ。

 

toyokeizai.net

 

より竜宮城らしく!ということで、新しい駅舎には神社仏閣などで用いられる竜宮造りが採用されている。

 

竜宮城スタイルの駅を造るうえでの難しさは、当然ながら「参考になる本物がないこと」(担当者)。

 

という当たり前のことを言っているのが面白いけれど、それと同時に、実際には存在しないのに竜宮城らしさを意識しましたと言われて見てみると、なるほど竜宮城らしいなと思ってしまう不思議さが確かにある。竜宮城と名前に城が入っているが、その名前を聞いてそれほど本格的な城ではなく、横に平べったくて朱色に塗られているような建造物のイメージが浮かぶ。実際の城で言えば、首里城が1番それっぽいものかもしれない。そして、そんな竜宮城の幻影を真面目に再現しようとしている姿勢を見て、なんだか羨ましく思える。もちろん大変な苦労が途中にあったとは思うが、竜宮造りにしようと話し合ったり、隠れキャラを入れようとアイデアを出したりするのは、文化祭の準備みたいにワクワクして楽しかったんじゃないだろうか。果たして亀の背中に乗って本物の竜宮城に行った唯一の人物である浦島太郎は、帰ってきたときにそんな風にして完成した片瀬江ノ島駅を見て「地上にも竜宮城がっ…!」と思ってくれるだろうか。

 

湘南では片瀬江ノ島駅が建て替えられたが、京都では去年、鞍馬の天狗の二代目の像が建てられた。

 

www.asahi.com

 

京都精華大学の学生がデザインしたこともあって、顔が初代の天狗よりもキリッとしていて若々しい。初代の天狗はこれを機に引退するようで、現役のころには雪の重みで鼻が折れたハプニングもあり、お疲れさまでしたと労いの声をかけてあげたいところ。

 

www.gissha.com

 

話は湘南に戻るけれど、やっぱり湘南は江ノ電が走っているのがいいわけです。最近はサザンがYouTubeにMVをいくつかフルver.でアップしているけれど、江ノ電に乗るシーンのある「素敵なバーディー~NO NO BIRDY~」のMVもあげてほしいところ。ところでBIRDYって一体どういう意味なんだということが気になり調べてみると、一般的な用法として幼児語で「鳥さん」を意味すると出てきた。しかし、その意味を歌と照らし合わせてもいまいちピンと来ない。そんなところで下のサイトが見つかった。

 

kuwatabushi.blog67.fc2.com

 

実際にはBIRDYは基本的に男性に対して用いられる呼称のようだが、桑田さんがそれを知らずに女性の名前の体で使ってしまったという顛末なそうな。こういう小さな疑問が、コアなファンの人が運営しているサイトによって解決されるから、ネットというものは大変ありがたい。それにしても意味が分かったところで、じゃあNO NO BIRDYって一体どういう掛け声?といった疑問は残ったままであるが。

 

江ノ電は車窓から見える景色が素晴らしくて、昔、江ノ電の車内からの風景を収録したDVDが販売されているのを知ってそれを買おうと思ったのだが、その商品のレビューに「残念ながら曇り日の映像です」みたいなことが書かれてあって買うのを止めた。いや、そこは晴天の日にせんかい。そこは晴れの日の風景が撮れるように惜しみない努力をしろよ。『まあ曇りやけどええか』じゃないねん。しかし今や、世はまさに大YouTube時代。探せば一般の方が江ノ電に乗って撮影した動画を見つけることができる。ある意味で、この世の全てがそこにあると言っても過言ではないのかもしれない。色々ある江ノ電車載動画の中でもこちらが比較的見やすい。

 


江ノ電2000形 前面展望 鎌倉-藤沢 2018年夏

 

ありがとうございます、投稿者さん。わたしにとってはあなたがゴールドロジャーです。やっぱりいいね、江ノ電は。海のこの開放感よ。少し白んでいる遠くの江ノ島の姿から、夏の湿気を含んだ空気感が伝わってきていい。さらには腰越駅ー江ノ島駅間の生活感溢れる市井の風景にもグッとくる。海に近い生活というものに憧れる。この区間の、通勤帰りの人たちで溢れた夕方の時間帯の様子とかもいいんだろうな。他人の生活の息づかいが感じられる瞬間に出会ったときに、なんだか少し心が落ち着くようになったのはいつからなんだろうか。自分以外の人間が、自分とは関係のないところで普通に生活しているという事実から得られる妙な安心感。それに加えて、自分がなんだか悩んでいるときに、淡々とレジをこなすコンビニのアルバイト店員や、普通の顔をしたまま自転車を漕いで下校している高校生の男子などを見ると、なぜか勝手に元気づけられるときもある。いや、彼らにももちろん悩みはあるのだろうけれど、わたしの悩みとは全く関係ないところで生きている様子を見て『ああ、おれが悩んでることなんてこの人たちにとってはどうでもよくて、何の影響もないわけで、そう思ったらなんか分からんけど、自分にとっても別に大したことじゃない気がしてきたな』と思えるときがある。他人の悩みが見えないことに対して、世界で自分だけが悩んでいるんじゃないかとモヤモヤするときもあれば、見えないからこそ自分の悩みなんて自分だけのちっぽけなもんだと元気づけられることもある。わたしは我がままなのかもしれない。

 

江ノ電って、今はおよそ10kmの区間に駅が合計15個あるのだけれど、昔はもっと駅が多かったらしい。

 

www.enoden.co.jp

 

開通した当初は39駅もあったらしく、ナンボほどあんねん、めっちゃ止まるやんって感じです。そう言えば貴志祐介の小説「青の炎」に、本気で自転車を漕げば江ノ電に乗るよりも速く移動できる描写があったな(これ若干ネタバレ注意?)。江ノ電はそれほど速くは走らない。

 

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2002/10/23
  • メディア: 文庫
 

 

それにしても昔の駅名にある海岸通って名前、良すぎるやろ。海感がザァザァ。名前を見るだけで、小道の先に広がる海からの波の音が聞こえてくるような気がしてくる。調べてみると、海岸通は地名として横浜や神戸などの海の近くの場所によくあるそうだ。海岸通の意味は文字通り、海岸へと続く路。そう言えば、昔見たシドニーのドライブ動画で海まで出るやつめっちゃ良かったなと思い、調べてみたが見つからなかった。代わりにManly Beachを散歩している動画を見つけたけれど、やっぱりいい。

 


Manly Beach Sydney Australia

 

湘南よりも乾いた空気の感じが、動画に映る空の色から伝わってくる。アメリカのマイアミとかもこんな感じなんだろうか。オーストラリアには一度行ってみたいと思うのだが、行った人が軒並み「沖縄のほうが海綺麗やで」などと言ってくるから、そのたびに『マジかよ。じゃあ沖縄でいいか・・・。まあ沖縄最高やしな』となってしまい、出鼻をくじかれ続けている。あとはフランスのニースにも行ってみたい。本当にデュフィの絵画である「ニースのアンジュ湾」みたいな感じなんだろうか。

 

f:id:Cluster-B:20200517211717p:plain

 

沖縄のような自然味溢れる海もいいけれど、シドニーやニースみたいな背中に街を背負ったようなところに位置する海にも憧れる。動画を見るのにも飽きて、そろそろ生で海を見たくなってきたし、ゴールデンウィークに会えなかった友人たちにも会いたい。海までみんなで散歩したい。H2のひかりの

 

ーーー時々、突然 急に比呂の顔が、見たくなることがあるの。

(中略)

海と同じなんだよ、比呂は。

 

というセリフと、今の自分の感情は100%でシンクロしている。もはや今の自分は稀代のモテオンナ、雨宮ひかり。とはいえ作中のヒロインとしては古賀春華派。

 

H2 12 (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

H2 12 (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

  • 作者:充, あだち
  • 発売日: 2005/02/16
  • メディア: コミック
 

 

そして、海を見たいと思うたびに、世界には海の素晴らしさを知ることなく人生を終える人たちがいるという事実に考えが及ぶ。なんなら、海を見たいけれど見に行けないなどではなくて、そもそも発想として海を見に行くことが頭にない人もいるのだろう。こんなに海はいいのに。しかし、これは逆もまた然りであり、日本で暮しているわたしには想像もできないような素晴らしいものが世界にはあるはずなのだ。それは別にオーロラのような劇的に素晴らしいものなどではなくて、わたしが海を見に行くのと同じような、そこで暮らしている人たちにとっては日常の延長線上にあるような素晴らしいものが。って書いたけど、海外に行かずとも多分日本にもまだある。きっとある。そんな気がする。ということで、早く色んなところに行けるようになってほしい。