ベランダの「オーバードライブ」の冒頭の歌詞を、おれはいま君のことを励ましているけどおれより君のほうがすごいやつなんだからおれが励ましてんのは変な感じってな意味で、「励ました俺は何ひとつ君には敵う気がしない」と歌っていると思っていたら、本当は「負けました俺は何ひとつ君には敵う気がしない」だった。投了してたんかい。
キリンジの「耳をうずめて」を良いなと思いながら聴いていたら、「洒落のめして」って言葉が出てきて、なにそれ?となった(なんそれ?まではいかなかった)。なんとなく「洒落のめす」って「いてこます」みたい、などと思いつつ意味を調べると3つくらい出てきて、多分そのうちの「大いにおしゃれをする」が歌詞で使われている意味だと思われた。のめすは「禿げ散らかす」の散らかすみたいなニュアンスか、じゃあ逆に「禿げのめす」とかいけんの?と「のめす」の意味を調べると、「動詞の連用形のあとに付いて、その行為を徹底的にする意を表す」と出てきた*1。いけるやん、禿げのめす。徹底的に禿げたらそれはもう禿げのめすやん。将来自分が禿げたとして、禿げのめす前に潔く自ら「禿げました」と認めることができるんだろうか。禿げのめすまでいかなくても禿げていることには気づけるはずだが、そんなはずはないとのめすに至るまで目を逸らし続けてしまうのだろうか。
FIDLARの「No Waves」って曲が好きで頻繁に聴いており、そういやどんなことを歌っているんだろうと歌詞を翻訳にかけてみたら、めちゃくちゃドラッグの曲だった。シャブのめしてむしろもうシャブやりたくないっていう、のめしにのめした曲だった。
なんか忙しい人に自分とは関係のない業務を頼まれてそれを請け負ったあと、「ありがとう」って200円もしない飲み物やらお菓子やらをおごられたときには、別にこんぐらいのもん自分で買えるけどな、舐められたもんやで、って思う。感謝の気持ちってのは分かるけど、これでチャラってことにはならんで、別におれ自分で買えるしって。何ももらわずにただ「ありがとう」って言われただけのほうが、いちいちこんなことを思わずに終われる。この「舐められたもんやで」のニュアンスはだいぶ柔らかめのやつで、この程度の感謝じゃあやったことに見合わないとか、そこまでは思っていません。仲が良い人とかには冗談めかして「こんぐらいで済ますなんて、舐められたもんやで」って実際に言えるぐらいの柔らかいやつです。「のめす」の件があったから「冗談めかす」の「めかす」もちゃんとした意味があるんだろうと調べてみたら、「何らかの風を装うといった意味合い」と出てきて、じゃあ「冗談めかす」は冗談を装ってホンマは冗談じゃないってことになるから、上で使った「冗談めかして」は間違いだった。シンプルに「冗談で」でよかった。本当に冗談で言っているので。
お風呂から上がってもまだ窓の外が明るいのが嬉しい。本当は窓を開けて外の風を浴びたいけれど、暑いからそんなことはせずにクーラーの風を浴びる。外のにおいだけが入ってくる涼しいクーラーがほしい。お風呂に入っている間に、そんなにのどが渇いていなくても無理やりお茶を飲みたいと思いながら体を洗っていると、だんだんのどの奥がムズムズしてきてお風呂から上がってすぐにお茶が飲みたくなり、実際に飲んだらめちゃくちゃ美味しく思える。生き返ったぁって思うたびに、別に死んでなかったけど、っていちいち思う。夏は、夜中に目が覚めて飲むお茶も美味しくてグビグビいける。グビグビいって、美味しいってなって、でもそのあとはすんなり眠れる。顔に当たる冷蔵庫の明かりは少し眩しいけれど、目が覚めるほどではないからすんなり眠れる。
心ゆくもの
よくかいたる女絵の、詞をかしうつけておほかる。物見のかへさに、乗りこぼれて、をのこどもいと多く、牛よくやる者の車走らせたる。白く清げなる陸奥紙に、いといと細う書くべくはあらぬ筆して文書きたる。うるはしき糸の練りたる、あはせぐりたる。調食に、ちよう多くうち出でたる。物よくいふ陰陽師して、河原に出でて呪詛の祓へしたる。夜寝起きて飲む水。
前もどこかで書いたと思うけど、枕草子の「心ゆくもの」の章で、満ち足りた気持ちになる具体的な例をいくつか列挙した最後に、シンプルに「夜寝起きて飲む水」って書かれたのを読んだときに、うわあ、ってなった。その緩急にやられた。美味しいとか生き返るとか思っていたところ、満ち足りた気持ちになると言われれば確かにそれが一番しっくりくる表現で、この文章に出会ってからというもの、本当にこの「夜寝起きて飲む水」のことを定期的に思い出すようになった。夜中に起きてお茶を飲みすんなり眠れるのは満ち足りた気持ちになったからって、パッと見はそんな特別変わったことを言ってるわけじゃないように思えるけど、心ゆくものを列挙しようってなったときにこれを挙げられるセンスというか、思いつく感性に憧れる。あとやっぱり陰陽師っておってんなって、これを読んで思う。
*1:そういえば「うちのめす」がそうだった。