久しぶりに海を見に行ったら、やっぱり良かった。この前行ったときには、なんか海って飽きたなあ、なんとなくで良いって思おうとしてんなあ、とか考えてしまったけれど、今回は気候が涼しく視界が開けているのが爽快で、海辺を歩いていて気持ちよかった(単なる自分の気分と訪ねるタイミング次第な気もするけど)。最初のほうは音楽を聴きながら歩いた。まずはYUKIの「コミュニケーション」を聴いた。AmazonのプライムビデオにYUKIのライブDVDが二つだけ配信されているけれど、全部配信してほしい。最近はDVDを取り出すのが面倒になって来たから。「コミュニケーション」のライブ版を見たくてYUKIのWikipediaで収録されているDVDを探してみるも、どれにも入っていなかった。YUKIのあとはベタにサザンを聴きたくなり、サブスクの「太陽は罪な奴」をタップした。『待ちきれぬ Long Vacation』の『ロ~ングバアケェイション』って歌い方がええなと、メロディも最高でやっぱりええなと浸りながら歩いていたら、「太陽は罪な奴」が終わったあとに自動で再生されてきた次の曲が思いのほか良かった。
「君に贈るLOVE SONG」。自分は「海のYeah!!」と「バラッド3~the album of LOVE~」と「キラーストリート」ぐらいしか聴かない程度のミーハーで、「太陽は罪な奴」を聴くときには毎回「海のYeah!!」経由で聴いていたのだが、今回はなぜか直接シングルの方をタップして再生したから、そのおかげでカップリングとして収録されたこの曲を知ることができた。あわせて上に挙げた三つのアルバムぐらいしか聴かないもんだから、「君に贈るLOVE SONG」のボーカルを聴いて、これ「夏の日のドラマ」を歌ってる人と一緒やん、とそれがドラムの方とまでは認識していない程度の感想を抱いた(あとになって調べて分かった)。自分はサザンのメンバーの中で桑田佳祐と原坊しか認識しておりません。申し訳ございません。「君に贈るLOVE SONG」は渋くてカッコ良く、イントロのホーンの演奏からポルノグラフィティの「ラビュー・ラビュー」を連想して次はそっちを聴く。これまた良い曲で、「君に贈るLOVE SONG」とか「ラビュー・ラビュー」みたいなホーンがあって軽快な感じの似た曲を知っている人は教えていただきたい。そんなふうに両耳に挿したイヤホンからの曲を聴きつつ海を見ながら歩いていたら、急に波の音などを聞かずに歩くのはもったいないように思えてきて、イヤホンを外した。砂浜にはテントを建てている人たちがたくさんいて、バーベキューの香りが辺りに広がっている。かごに入れたスピーカーから音楽を流しながらノリノリで自転車を漕いでいる上裸のおっさんとすれ違う。夕方ぐらいから歩き始めたから、歩いている方向の西の空には夕日が浮かんでいる。振り向いて反対の東の空を見ると、まだ明るさを残した青空に六分ぐらいの月が浮かんでいた。前に向きなおってもう一度空を眺める。夕陽の沈もうとしている海の上を飛行機が飛んでいる。飛行機がまさに夕日の真上を横切っていくときに腹の部分が夕日を反射して同じ色に輝いた。その瞬間急に、本物やん、ホンマに空飛んでる本物の飛行機やん、って感覚が自分の中に湧いた。輝いたことで飛行機の機体の質感が急に具体的に感じられたからかもしれない。空は綺麗な虹色をしていて、それを眺めているときの恍惚は、小学生のころにデジモンカードのキラの虹色を眺めているときに抱いたものとそっくりだった。
それからしばらく歩き続けていたら、防波堤に肘をかけ海に向かってスマホを掲げるひとがにわかに増え、それがすぐに夕日が沈む姿を写真に収めようとしているからだと分かった。自分もすぐに夕日に目を向ける。そのまま見ようとするととてつもなく眩しくて、目を細めながら水平線にかかる夕日を見つめていたら、すうううう、っぽんって吸い込まれていくみたいに、思いのほか早いスピードで夕日は消えていった。そうして夕日が水平線に隠れるスピードを知らなかったことから、自分は初めてちゃんと夕日が沈むところを見たのだと認識した。夕日が沈みきってもまだ空は明るく、ビルの上とか目線の高いとこからだったら、まだ夕日の姿が見えるのだろうかなんて考える。そういえば、今の季節の日の入は何時何分?と腕時計を見れば、時計の針は17時30分を指していた。それから辺りはゆっくり暗くなっていき、岩の突堤で釣りをしている人のシルエットもさっきよりも濃くはっきりとしてきた。東の空の月は、夕日が沈む前には空に透けて浮かんでいたのに、今はそれ自体が光を放って輝いている。そんな夕日の沈みゆく一部始終が綺麗で、すぐにもう一回見たくなって次の日にも海に行ったら、この日は晴れだったけれど西の空の低いところに雲が広がっていて見られなかった。そうか、空の天気も重要なのか、と当たり前のことに気がつき、でも二日連続で見れていたら昨日見ていた分感動が薄まっていたかもしれない、こういうのはあんまり頻繁に見るもんじゃなくたまに見るのがいいのだと、本当は残念だったのに、でも本当にその通りだとも感じながら、そんなことを考えた。