風邪を引いた。水曜日の夜にしんどくなったからあと二日は気張る必要があり、テンションが下がった。水曜日にはとにかく寝るしかないと夜九時に布団に入ったが、蓄膿症みたいに顔の節々が痛くて眠れなかった。薬を飲むか悩む。発熱はそのままにしておいたほうが、体の中で細菌やらウイルスやらが死にやすいのか、治りが早いという経験をこれまでの人生でしてきているから、解熱剤はよっぽどしんどくない限りは飲まないようにしているのだが、顔が痛くて眠りにつけない(アンパンマンみたい)。手持ちの薬をあさってみれば、痛み止めのバファリンが見つかった。外箱の効能の欄に、鎮痛と併せて解熱の記載もあり、解熱はせんでいいから痛みだけを止めてくれと、そんなことが可能なのかどうかは分からないが思う。とはいえ、このままろくに眠らないまま仕事に行くのは、ただただしんどさが増すのみだと判断してバファリンを服用すると、一気に痛みが引いて気づけば寝ていた。起きたときには体から汗がぶわぁっと噴き出していて、なんとなく汗をかけばかくほど回復に近づくもんだと思っているから、いい感じやん、と思った。でもそれも気のせいで、結局そのままズルズルとしんどいのが土曜日まで続いた。雪山で遭難したときと同じように、風邪を引いたときには高カロリーのものを摂取したほうがいいと、それをいつどこで知ったかは覚えておらずとも信じているから、風邪を引いたときには毎回アイスクリームを食べるのだけれど、今回はアイスクリームを食べたら体が冷えてちょっと調子が悪くなり、普通に風邪の時には高カロリーはいいとして冷たいものは食べないほうがいいことを学んだ。土曜日を迎えてもまだ気怠く、寝れるだけ寝ようと朝からずっと布団に潜ったままでいた。スマホの画面を見ると、すぐに目の奥が痛くなって気分が悪くなる。お昼ご飯に冷凍のうどんを食べると、元気なときに食べるよりも少しだけ不味い。お風呂上がりのバスタオルはいつもより柔軟剤の匂いがキツい。そんなふうに風邪のときにはなんとなく五感(今回、聴覚と触覚には覚えがないけど)が研ぎ澄まされてるような気がする。そうして迎えた土曜日の夜に、しんどいけど暇やし、でもスマホイジってたら気分が悪くなるし、テレビでも点けるかと電源を入れればR-1グランプリがやっていた。R-1グランプリは今まで放送されていてもスルーしてきたけど、今は気分的に明るい番組がいいかと見ることにした。友田オレがファーストラウンドでネタをやるところからで、そのネタが面白かった。決勝の二本目も面白く、ていうか普通に歌がうまくて、言い回しが面白いのはもちろん歌として良かった。いつかのABCお笑いグランプリでも同じことを思った気がする。そのときは友田オレのおかげで「わたしの彼は左きき」を知ることができた(良い曲)。どぶろっくも歌がうまいから聴けるというか見たくなる。「stand up!」とか青春パンクバンドのアルバムの箸休め的な楽曲にありそうで良い曲。
最後のワンフレーズのハモるとことかグッと来ます。自分はこの曲を聴くと、B-DASHの「梅抹茶」を聴きたくなる。
友田オレを聴いていたら歌謡曲って良いなと思うし、音頭も良いなと思う(本当の音頭がどんなもんかは知らんが)。洋楽に比べてダサいと言われるそのメロディの強さが良い。そんなことを思っていたら、なんだか急に最近なにかのCMで流れていた中森明菜の「スローモーション」が聴きたくなって、聴いたらやっぱ良かった。
【公式】中森明菜「スローモーション(from『はじめまして』)」【1stシングル(1982年5月1日発売)】Akina Nakamori /Slow Motion
ついでに漫画の「スローモーションをもう一度」なんかも思い出したりした。自分はこの曲がリリースされたころにはまだ生まれていないし、この曲を聴いてノスタルジアを感じたりもしないから懐古主義とはまた違うのだろうけれど、とはいえ年々昔の歌謡曲に良いなあと思うことも増えている気がしていて、このままいけばそのうち演歌なども好きになるのかと、今はまったくその良さが分からないけれど思う。そうなったら怖い。だって今は本当に演歌の良さが分からないから。
YouTubeで「稲垣足穂」と検索してたまたま見つけた、「何か分かりづらいチャンネル」のこの動画がかなり面白かった。
現実世界(因果)を侵蝕する宇宙的郷愁:稲垣足穂『ヰタ・マキニカリス』『天体嗜好症 一千一秒物語』読解【茂田真理子『タルホ/未来派』×加藤夢三『合理的なものの詩学』】
稲垣足穂は色んな随筆やら短編やらで同じようなことを繰り返し書いているから、ざっと一通り読めば言いたいことがなんとなく分かってくるのだけれど、この動画でより一層稲垣足穂が何を考えていたのか、何に惹かれていたのかが分かった。こんなに分かりやすく、色んなところからの引用を示しながら解説してくれ、それを無料で公開してくれるなんて本当にありがたい。しかも自分はちょうど、大学生のときにブックオフで買ったアインシュタインの「物理学はいかに創られたか」をなんとなく掘り返して読んでいて、勉強っぽい内容にちょっと飽きていたところだったから、この動画のおかげでちゃんと読もうともう一度やる気にさせられた。でも実際はあんまり進んでいなくてまだ上巻。しかも一般相対性理論の話が出てくるのは目次をみたところ下巻。こういう勉強系の本は、本屋では面白そうに思えて読む気十分なのに、家に買って帰れば読む気が消え失せているのをどうにかしてほしい。家具とかお土産が家に持って帰ってきたら急にしょぼく見えるのもどうにかしてほしい。やっぱり外っていう少し刺激のある空間だから、気持ちも活性化されてやる気やら素敵やらそんなことになるんだろうけれど、家に帰ればそれがすっかり落ち着いてしまう。それが家の良さなのかもしれないが、自分は今住んでいる家の内:外の割合が10:0だとすれば、6:4ぐらいのもう少し外の空気感のあるシャキッとする家に住みたい。いや、6:4はやりすぎか、7:3ぐらいのほうがいいか。8:2でもいいか。なにせ家のもう少し外の要素を入れ込みたい。
村上春樹の『カンガルー日和』の「かいつぶり」って話を読んでいたら、佐々木マキの描いたプールの絵が挿入されていて、in the blue shirtの「Cluster A」のMVに似たようなシーンがあったような気になった。
改めてMVを確認したら、やっぱりプールのタイルの目地が水面と一緒に揺らいで見える描写がそっくりで、おそらくここを参照したことを知る。もしかしたら、MVに出てくるクルクル回る椅子も、『カンガルー日和』に収録されている「図書館奇譚」が終わった後のページの椅子の絵を参照しているかもしれない。