牛車で往く

猿も木から落ちる イチローも肉離れする

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Icyな待合室

今更ながら、ネクライトーキーのアルバム「freak」にハマっている。一枚通してずっといい。一発目に聴いた時にはスムルースのアルバム「ドリーミーワームホール事典」に似ていると思い、それはただ単に「freak」の最後に収録されている「夢を見ていた」の曲の雰囲気が、同じように「ドリーミーワームホール事典」の最後に収録されている「万葉の夜に」に似ているからだった。アルバムを聴き続けているうちに、歌詞の雰囲気がthe band apartっぽくもあると思えてきたのだけれど、ネクライトーキーのほうはいわゆる社会とか世間とか言われるものの中で上手く行かんなあって渦中にいるのに対し、バンアパは外から中にいる人たちを見ている感じがあって、そこはなんとなく違う。割とネガティブなことを歌ってんのにメロディをつけたら明るい雰囲気になるのが本当に音楽の良いというか、ある意味ズルいところだなと思う。中でも「豪徳寺ラプソディ」にハマりにハマって、豪徳寺ってどんなところか知りたく、豪徳寺が舞台の小説を調べると片岡義男のホームページにたどり着き、片岡義男がホームページで自身の作品を電子書籍化しているのは以前から知っていたが、一万円を払えば永久に読み放題ってことは知らなくて、一発払っちまおうか割とマジで悩む。片岡義男の小説の、ちょうどよい軽やかさを考えると、なんぼでもサラサラと読んでしまえそうとも思うし。とか言いながらやっぱり一万円は高いから、払わないまま豪徳寺の出てくるエッセイを読んでいたらすぐに、これ以上読むには会員登録をしてください、とのポップアップが表示されたので諦めてページを閉じた。ずっと東京に1年ぐらい住んでみたいと思っている。本気を出しゃあ転職でもなんでもして実際にできるわけですが、働かなくてもいいくらいお金持ちになったらみたいな、そんなんいつ自分の人生に訪れんねんってときをひたすら待って実行に移すことはない。そんなことを何の予定もない休日の14時ぐらいにできた暇のせいで考えていたら、なんかモヤモヤしてきて、そのモヤモヤを晴らすためにネットで良い感じの半袖のTシャツを探して勢いで買った。買ったことによるプシューって謎の鬱憤が抜けていく感覚と期待感は商品が家に届くまでしか続かないって、んなこと分かったうえでそのごく短い間の憂さ晴らしのために買った。買った翌週の休日に、届いたTシャツを洗わずに着たら背中がチクチクして、日中やたらと背中をかく羽目になった。背中をかこうと伸ばした左腕は、1年前ぐらいに肩の辺りの筋を違えて以来、明らかに可動域が狭くなっており、痒いところにギリギリ届くぐらいで辛い。無理をすればまた筋を違えて、どんどん背中のかける範囲が狭くなっていきそうで、ってそういえば小さいころによく家で、テレビを見ながらあぐらをかいている父親に、ちょっと背中かいて、もうちょい右、右、もうちょい上、そこそこそこ!みたいな感じで背中をかかされていたことを思い出し、ああ、こういう経緯で他人に背中をかいてもらわなければならなくなるのかということが、このタイミングで腑に落ちた。自分はあれが結構面倒くさくて、自分でかいたらいいやんって思っていたから、自分の嫌なことは他人にしたらあかんという人間として基本のルールを守るために、できるだけ自らで背中をかけるようお風呂上がりなどに腕を肘のところから90°の角度に曲げて壁に手をつき、それから壁につけた側の足を一歩前に出すストレッチをやり始めた。ストレッチって効果が出るまでは本当に恐ろしいほどつまらないから、一体どれだけ続けられるのか分からない。それ以上に本当に恐ろしいほどつまらない仕事をこれほどまでに続けられているから、ストレッチもしなければ日銭を稼げないみたいな、そんな強迫観念をおれに植え付けてほしい。働かなくていいぐらいお金がたまったらっていうのは、大谷の肘で前ならえができるほどの肩の可動域の柔らかさが手に入ったらっていうぐらい現実味がないことなのか、それとも意外と肘で前ならえのほうが才能によるもので難しいのか。金を稼ぐのも才能によるものなのか、それとも自分が難しく考えすぎているだけで慣れりゃあ簡単なことなのか。

 

っつうことを、一度洗濯をしてもうチクチクしなくなったTシャツを着て出かけたまだまだ蒸し暑い夕方5時前、電車がやってくるのを待つあいだ入っていた、駅のホームにあるクーラーの効いたicyな待合室のベンチに座って、あまり頭で考えずにほとんど手の動きに任せて自動筆記みたいにしてスマホのメモに書いていたら、他にもベンチはたくさん空いていて、さらに自分はみんなが座りそうな端ではなくあえて真ん中の方に座っていたにも関わらず、向かいのベンチにおっちゃんが座ってきたのがスマホを見る視界の端に映り、それにちょっとだけイラッとした。どんな顔してんねんってスマホから目を離しておっちゃんのほうにちらっと視線を移したら、待合室の窓の向こうでめちゃくちゃ夕立ちが降っていて、家出る前に洗濯物を入れてきてよかったと思った。ってことからthe band apartの「図書室の幽霊」を思い出して、だからicyって言葉を使った*1

 


図書室の幽霊

*1:icyいうほど寒くなかった。