牛車で往く

日記や漫画・音楽などについて書いていきます 電車に乗ってるときなどの暇つぶしにでも読んでください

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河川敷ですれ違うおっちゃんに教えてもらったこと

家を出て自転車に乗り会社に向かって漕ぎ始めると、ペダルを漕ぐのに合わせてキコキコと音が聞こえてきた。大学を卒業し会社に就職して以来いまの自転車にずっと乗り続けているのだが、そろそろガタが来ているのかもしれない。とはいえそんな音が聞こえてくる頻度は一週間に一度くらいであり、自転車に調子なんてものがあるのかは分からないが、仮にそんなものがあったとして、ほとんどはなにも鳴らない調子の良い日であるからこれまでは特段その音を気にすることはなかった。しかし、なんの歯車が噛み合ったのかは知らないが、その日はペダルを漕ぐ度に鳴るその音が、まるで虫歯によって露出した歯の神経が刺激されたときのようにやたらと不快に自分の鼓膜に響いてきて、その音に対して自覚的になった。そうすると自分が高校生ぐらいのころに、いままさに耳にしている音と同じ音を鳴らしながら街をユラユラと自転車で泳いでいくおっちゃんの姿をよく目にしていたことを思い出し、そんなおっちゃんを見ては『その音どうにかしたほうがいいやろ』と当時の自分が思っていたことまで思い出した。しかしいざ自分がこの音を鳴らす側になってやっと分かった。この音は何が原因で鳴っているのかが全く分からず、どうしたらいいのかも分からないのだ。なんとなくタイヤの泥除けが歪んでいてそれがどこかにこすれてこんな音が鳴っているのだろうかと考え、泥除けを足で少しばかり押してみるのだが改善の兆しは一向に見られない。どこかに油をさせば直るのか?でも油なんてこれまでの人生でさしたことがないからまさかサラダ油をさすわけではなかろうが、こんなとき専用の油なんてものがあるのだろうか?それに油をさす方法だってバックスバニーのアニメでしか見たことがなく、そのアニメでは先端の細いシュポシュポと音の鳴る油さし器と呼べばいいのだろうか?そんなものを用いていたのだが、果たしてそんなものが本当にあるのだろうか?全く分からない。

 

そんなことを考えながら、河川敷の途中にある橋の地点に差し掛かった。通勤時に毎朝通ることになるこの地点には信号や横断歩道がなく、そのまま川沿いに進んでいくには橋を渡ってくる車の往来が途切れる瞬間を待たなければならないのだが、その日は車が途切れるのをわたしが待っていると軽トラックに乗ったおっちゃんが止まってくれて、運転席で手を出して「渡り、渡り。」と譲ってくれた。会釈をしながら道を横断する。わたしの体感でこういう風に道を譲ってもらえるのは年に三回ぐらいあって、そのたびにカネコアヤノの「Home Alone」の一節が頭の中で流れるのだが、この日も同じようにして頭の中でこの曲が再生された。

 


カネコアヤノ - Home Alone

 

確信的だ 今日は必ずいいことあるはずだ
追いかけたバスが待っていてくれた
かっこいいまま ここでさよなら

 

そのまま自転車を走らせていると、すれ違うおっちゃんに「兄ちゃん、ライト点けっぱなしになってんで。」と声をかけられた。そう言えばそうだった。先日もこのおっちゃんに「兄ちゃん、ライト点けっぱなしになってんで。」と教えてもらったのをすっかり忘れていた。毎朝同じ時間に家を出ていると、橋の近くの階段らへんですれ違うメガネのお姉さん、河川敷の中間地点あたりのベンチで座ってる犬の散歩途中のおばちゃんといったふうに、会社に着くまでに見かける人たちはいつも同じようなメンバーになってくる。このおっちゃんもこういったレギュラーメンバーのうちのひとりで、わたし自身も薄々とその可能性を疑っていたのだが、先日このおっちゃんに指摘されて、わたしの自転車のオートライトは常時点灯しているとついに確信へと至ったのだった。このときやはりそうだったかとなったわたしは、そのまま後方へと離れていくおっちゃんに向かって「やっぱりそうでしたか。」と返答したのだが、オートライトの仕組みが分からないから、これまた異音同様どうしたらいいのかが分からなかった。何か感光センサーのようなものが搭載されており、その部分がある一定の光量の光を感知しなくなったときに自動で点灯されるような仕組みなのだろうか。そう思えばpanpanyaの漫画で、街灯はこのシステムが採用されているものがあると描かれていた気がする(読み直してみたら「二匹目の金魚」でした。)。

 

二匹目の金魚 (楽園コミックス)

二匹目の金魚 (楽園コミックス)

  • 作者:panpanya
  • 発売日: 2018/01/31
  • メディア: Kindle版
 

 

ただ、そんなことを考えながらも自転車を漕いで到着した先は会社であり、わたしも社会の歯車のひとつであるならば、自転車のオートライトのどうこうなんかよりも今日一日の業務のほうに気持ちを割かねばならず、働いているうちにそんな問題はどこかへと行ってしまうのであった。そしてそんな河川敷で指摘を受けた数日後のこの日、再びおっちゃんとすれ違った際にまたもや同じ指摘を受け、ああ、そう言えばライトの調子が悪かったなと思い出したと同時に、あのときすれ違いざまにおっちゃんに投げかけた言葉はやはり彼には届いておらず、空気中に霧散してしまっていたことが明らかとなった。このままでは朝の河川敷でこのおっちゃんにエンカウントするたびに同じ台詞を吐かせることになり、おっちゃんがNPCでなければいずれかのタイミングで「こいつ、何回教えたっても無視するやんけ。」と逆鱗に触れる恐れがある。そんな危険を回避するためにわたしはわざわざ自転車を止めて、「なんか調子悪くてずっとこんな感じなんですよ。」とおっちゃんに説明し、「ほう、そうけ。」とその言葉が彼の耳に届いたことを確認した。そして、おっちゃんに分かってもらえて良かった良かったということに満足してしまって、そのままライトが点きっぱなしのことはまたもや忘れたままになってしまった(そんなことを思い出してこれを書いている。)。

 

思えば自転車の買い替えどきなるものが分からない。アメトーーク!の家電芸人でチュートリアル徳井の言っていた「買いたい時が買い替えどきー」なるセリフがどこからか聞こえてくるが、別に買いたいわけではない。乗ろうと思えば乗れるぐらいではあるのだ。そして何より、わざわざ自転車屋さんに見てもらうのがめんどくさい。そう思うと、自分が高校生のころによく目撃していた異音を鳴らしながら自転車に乗っていたおっちゃんは、変な音は鳴るけれど自分で直す方法は分からないし、自転車屋にわざわざ行くのはめんどくさいし、別に乗れないわけではないといったことでそのままにしていたのだろう。わたしも遂にその領域に足を踏み入れたことでやっと同じ目線に立てた。流石にブレーキをキーッ!と鳴らすおばちゃんの領域にまで踏み込んでしまったら、自転車屋さんに修理してもらいに行こうと思うが、しばらくはこのままキコキコと音を鳴らし、オールウェイズライトを点灯させながら自転車を漕ぐことになりそうです。

 

こんな風にしてわたしの河川敷ライフでは、漫画「男子高校生の日常」の「男子高校生と文学少女」みたいな面白おかしいことが起きることもなく、おっちゃんとの交流がほとんどである(この日はやたらと通勤途中に色々あったな。)。

 

 

それにしても最近風が・・・・・・冷たいな・・・。寒波が来る・・・。