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たい焼き屋を探し求めてさまよう夜(ドキュメント72時間「冬の東京 たい焼きエレジー」)

今日のドキュメント72時間。

 

www.nhk.or.jp

 

たい焼きエレジー。エレジー・・・。哀歌・・・。たい焼きの下にエレジーが付くもんでしょうか。

 

今回の舞台は、東京四谷の大通りから外れたところにあるたい焼き屋。そんなたい焼き屋に来た人たちの人生のドラマ。とはいえ、まずはたい焼きに関して知らないことを知ることができた。今回舞台となったたい焼き屋では、あんこを作る時に塩を入れていた。へえ~。スイカみたい。塩のしょっぱさがあんこの甘さを引き立てるということか。また、たい焼きを焼くときの金型にも違いがあり、3匹ぐらいをまとめて焼くものは養殖物、1匹ずつ焼くものは天然物と呼ばれるらしい。1匹ずつ焼く方が丁寧ということなんだろうか。と思って調べていたら、今回のドキュメント72時間で取り上げられていたたい焼き屋のインタビュー記事が見つかった。

 

president.jp

 

有名なところなんや。そして、天然物を作る際の金型の方が焼くのが難しく、技術がいるということが分かった。何事も奥が深く、極めるには鍛錬が必要である。そして、このお店では、外からたい焼きを焼いている姿が見えるのだが、職人さんはお客さんに見られていても淡々と焼き続けていた。作業をしている姿を見られてよく冷静にこなせるわと思う。わたしは仕事で先輩に見られながら作業を行っていたら、緊張で手が震えてミスをしまくる。もう見ないでほしい。そっとしておいてほしい。めっちゃこぼすやんとか言わないでほしい。優しくして。

 

そして、このたい焼き屋に集まってくるお客さんたち。学生時代からのなじみで、大人になってからも通っているという行政書士の方。いいよね、そういう行きつけのお店。憧れます。けれどいざ通い続けた結果、店員さんが自分のことを覚えてくれて距離を縮めて来られたとしたら、それはそれでしんどくなってしまうかもしれない。なんかね。気を遣ってしまいます。逆に、初見の店員のおばちゃんに常連のお客さんのように接客されたときは、テンションが上がったけれど。

 

www.gissha.com 

 

近くの塾に通う高校1年生の2人組。ここのたい焼き屋のひどく甘過ぎないあんこがいいとのこと。渋い。そして、行儀よく食べる姿がいい。たい焼きをかじって噛んでいる間は、口に手を当てている。その手の指の隙間の無さよ。なんかこういった几帳面というか神経質そうな人見るのは結構好きだ。その人の丁寧に生きているといったこだわりのようなものが見えるし、少し不器用そうなところが応援したくなる。なんかね、世の中ってこういう生真面目そうな人たちよりも、もうちょっと雑な人たちの方が声が大きいから、無条件に声の大きい方が正しいみたいな風潮があると思う。あいつら変わってると言ったもん勝ちみたいなところが。なんかそれが腑に落ちないというか。どっちも別に変でもないし、お互いに受け入れるでもなくそっとしておけばいいのにと思う。

 

さらには、塾帰りの親子。娘の塾帰りに迎えに行って、たい焼き屋でたい焼きをたべたあとに公園に寄って逆上がりの練習をするのが決まった流れらしい。なんかいいよなそういうの。和みます。自分も子どものころは親に運動を教えてもらっていたことを思い出す。近所の公園では今、危ないという理由で野球ボールを使った遊びが禁止されている。それにも関わらず、今の子はゲームばっかりしていて外で遊ばないと言われて、大変やなホンマに。どうしろっていう話。それでも、わたしが思うような不自由さを、実際に子どもたちは感じているのだろうか。

 

そして、たい焼きと言えばこの短歌を思い出す。

 

鯛焼の縁のばりなど面白きもののある世を父は去りたり

高野公彦

 

 

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作者はたい焼きを食べているときに、亡くなった父がたい焼きのばりを好きだったことを思い出したのだろう。たい焼きのばりに宿る父の魂。こういう何気ないものに焦点を当てるから短歌は面白いし、ハッとさせられる。

 

それにしてもみんな、鯛焼きを食べて落ち着きたいんでしょうね。居酒屋で飲んだ後に無性にたい焼きを食べたくなるのは、わたしだけでしょうか。そして、毎回お腹いっぱいになってしんどくなるのもわたしだけでしょうか。ご飯を食べてお酒を飲んだ後だから、たい焼きを半分ぐらい食べたらもうお腹がいっぱいになる。それでもわたしは酔いに任せて、今後もこのことを忘れてたい焼きを買ってしまうのでしょう。