久々に平方イコルスンの「駄目な石」を読み返して『最高やなあ』となり、これまたすぐさま何度も読み返す。なんか良すぎたんで今さら感想を書きます。
まあとりあえずは平方イコルスンのpixivに上げられている「駄目な石」の販促漫画でも貼ろうではないか。
平方イコルスンはその独特な台詞回しが特徴的とされているが、個人的には登場人物の二人組ないしはグループの関係性に憧れてしまう。面白い会話がしたいっていうのもそうなんだけれど、なんていうか、なんかしょうもないことでもやろうと提案して一緒にやれる間柄が単純に羨ましいのです。読んでいると自分も、崖に掴まっているところを助けてもらうといった来るべきときに備えて筋力を鍛えようだとか、みかんを落っことしたことを忘れないように再現動画を撮ろうだとか、好きな人を取り戻すべく(それとも鳩を取り戻すべく?)後輩に攻め入ろうだとか、もっとそういうことをしていこう、していきたい、そう思うのです。だからみなさんにも、わたしが常時しかめっ面であろうと心に決めたにもかかわらずあくびをした折にそれが保てていなかった場合には、ぜひ指摘していただき、常に顔をしかめていられるように練習しようと促してほしいのです。
最初に「平方イコルスンはその独特な台詞回しが特徴的とされているが」なんて風に、それはそうやけど一旦置いといてみたいな感じで書いたけれど、わたしが上に書いたように魅力に感じているキャラクター同士の仲の良さ、関係性は、やっぱりその独特の台詞回しによって表現されているようにも思える。思えば癖のある台詞、言い回しも仲の良い間柄だからこそ使えるわけだ。あまり仲の良くない人相手には当たり障りのない言葉しか使えないけれど、ある程度仲良くなってくると受け入れてもらえる言葉も増えてくるじゃないですか。特定の仲のいい友人グループの中では、なんで流行っているのか分からないけれど頻繁に使われる変な言葉だってあるし。そんな風にして会話におけるワードチョイスが、仲が深化するにつれて変化していくのはパワプロ君のサクセスでも学べる。わたしたちは心を許した人間には変な言葉を使いたくなるものなのかもしれない。平方イコルスンの漫画も、およそ仲の良くない人との間では使われないであろう台詞(仲良くてもあんまり使わんものも多いね・・・)の応酬により、キャラクター達の間に羨ましくなるほどの友情が立ち上がっているように見える(とか言いながらこの漫画では先生相手に生徒が「過去に惑わされるな!!」と言うし、先生は先生で生徒相手に「あたしなんて本来は入れ食いだから」なんて台詞を吐くけれど)。今の時代、仕事では相手に伝わりやすい言葉こそがコミュニケーションの絶対的正義みたいな価値観になっているけれど、それが正義じゃない価値観の世界にもわたしたちは片足を突っ込んで生きているわけで。友人や恋人とのプライベートな世界では、伝わりやすい言葉でよりも自分たちの間でしか通用しない言葉で分かり合いたいことがある。
そして、わたしはどうにも平方イコルスンの描くキャラの表情がめちゃくちゃ好きでして、ちゃんと読むとめちゃくちゃ丁寧に表情が描き分けられていることに気が付く。表情をデフォルメで簡略化している部分が全くない。読んでいるとやたらとキャラの表情ばかりを見てしまい、そしてなんだかおかしくなってきてニヤニヤしてしまう。なんていうか、魅力的な友人っているじゃないですか。見てるだけでなんだか面白くて楽しい気持ちが湧いてくるような。そんな友人の様子を眺めているときと近い感覚。個人的には『コイツの弁当食べてる姿、なんか面白いな〜』と思っていた高校時代の友人のことを思い出しました。首を絞められて「ひ〜」と言っているときの顔とか、みかんの間を通り抜けて「どう?」って振り返ったときの顔とか、好きな人にくすぐられて悶えているときの顔とか、もう全部がいい。なんて魅力的なんだ。ていうか収録されている全短編がいい。堪らん。中でも「運ぶ」に「訊く」に「咄嗟」が好き。でも「相討ち」と「勿体」と「発覚」もいいしなあ。いや、結局全部いいなあ。「橋」に出てくる三人組もいいんよ。
橋の三人 pic.twitter.com/XyZLnmZ2J3
— 平方二寸 (@hinirasukanta) 2016年2月11日
この話に出てくる橋を見るのが好きな女の子はスペシャルの伊賀を彷彿とさせる(順序が逆かもしれませんが)。
「普通に映画観てご飯食べて橋まで行ってしばらく橋見て」
「じゃあ別の橋でも見ながらって」
デートでやることのひとつとして、橋を見に行くのが映画を観るのと同じくらい普通のことと認識されているのが面白いし、なんなら橋を梯子するって。めっちゃ橋好きやん。ってそこがいい。なんか人間を見る眼差しに、愛と言えば陳腐かもしれませんが、そのようなものが宿っているように思えるんですよ、平方イコルスンの漫画には。ああ、友達と遊びてえ。