牛車で往く

カルピスソーダ飲んで、カルピスゼリー食べて、カルピスアイスバーかじって、気づけばカルピス三昧

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武士道と云うは

映画を見た(今さらの映画もありますが、ネタバレがあります)。

 

いつかNHKをぼんやりと見ていたら、アナザーストーリーなる番組で「侍タイムスリッパー」という映画が特集されており、それが面白かったのでこれはちょうど良いと見た。

 

 

最後の命を懸けた一騎打ちのシーン、映画だってわかっているのに、どちらかが死んでしまうのではないかという緊迫感で目が離せなかった。両者柄を握って刀を引くまでの長い見合い。その前から侍同士の間には奇妙な友情が芽生えており、現代でたった二人だけ、本当の武士道を持つもの同士として心を通わせていた二人のどちらかが死ぬ、どちらかが殺す運命になるっていう哀愁、切なさが良かった。暇な大学生の時分にスラムダンクやらあひるの空やらを読んで、「おれなにやってんねやろ。花道とかはこんなに一所懸命に何かに打ち込んでるのに」みたいなことを思ったときと同じような、真剣に生きている人を見て何かしなくちゃという感情を抱かされる系の映画。言ってしまえばそんな作品はいっぱいあるんだけれど、そういう展開に持って行くまでの流れが上手かった。命を懸けなければならない時代を生きていた侍が平和ボケした現代にタイムスリップし、ぬるま湯みたいな日常に浸っていたところ、かつての自分が生きていた時代のことを思い出して必死に生き始めるっていう、「武士道と云うは死ぬことと見つけたり」をタイムスリップと組み合わせて活かしているのが上手い。とはいえ「武士道と云うは死ぬことと見つけたり」の意味をちゃんとは知らず、ちょっと前に見た「ゴーストドッグ」という映画にも武士道を説いた「葉隠」が出てきたのもあって、簡単にWikipediaで意味を調べたてみたら、

『葉隠』 は人の「生きる理由」に着目する。「死ぬよりも生きることを優先する」という人間大多数の原則には必ず何らかの理由があると説く。しかし常にその理由を意識し続けているわけではなく、一度でも忘れてしまえば腰抜けに生きるようになり、人生そのものが台無しになるだろう。
そこで死の覚悟を不断に持することによって、自らの生きる理由を見つめ直し「職分を落ち度なく全うする」べきであると説く。武士として恥をかかず、また人間として有意義に生きるために、死ぬ覚悟が不可欠と主張しているのである。このように『葉隠』は死を礼讃しているのではなく、むしろ人生観について説いたものである。

と書かれていた。武士は死を恐れないという意味ではなく、「明日死ぬかもしれない」と死が近くにあるように意識すれば、今現在の時間、怠惰な道を選ばずに有意義な道を選んで生きることができるという意味だった。システム自体は分かるけど、死ぬよりも生きることを優先するという考え方が煮詰まった時代で生きてきた自分には到底無理な生き方。ほんでもって、「武士道と云うは……」的な思考をジョブズが言ってくるんやったらまだ分かるけど、ジョブズの威を借り、すぐにビジネスに結び付けて言ってくるやつはなんぼのもんやねんと思う。他者を啓発しようとせずに自己だけを啓発しといてください。それにしても、稲垣足穂が「横寺日記」で言及していたから読んだ野尻抱影の随筆集「星は周る」の中に、江戸時代には天の川はもっと降りかかってくるように明るかったと書かれていたものがあったことを、「侍タイムスリッパー」を見ているときに思い出し、そういえば現代人が過去にタイムスリップして星が綺麗とか言ってる作品はあるのかと考えたのだけれど、まあこんなことは人それぞれ、その時々の興味の対象の違いによって思いつくかどうか程度の些事で、星が見える見えない以外にも現代と昔とでは違うことが、言い出したらキリがないくらいあるんだろう。

 

 

よく名前を聞くから「マッドマックス」を見た。

 

 

アメリカ人ってそんなにカーチェイスが好きなのか。そう思っていたら、オーストラリアの映画だった。どちらにせよ、邦画ではカーチェイスの映画はあまりない気がするが。話の筋自体は単純なのだが、いつだれが死ぬか、ひどい目に会うのかといったハラハラで見てられる映画だった。結局自分は、緊張感のある映画だと飽きずに最後まで見ていられるから、苦手だと思っていたバイオレンス系もしくはホラー系が案外自分には合っているのかもしれない。それにしても奥さん、暴走族に遭遇して以降、常にマックスと共に行動するよう心掛けろよ。なんでそんな別行動すんねん。一生一緒にいてくれや。と思いながら終始見た。あとはボコボコになった車を見て、「噛んで吐き出したみたいだ」っていう比喩が良かった。これ以上ないピッタシな比喩。マッドマックスの第一作目は序章に過ぎず、続編が面白いそうなのでどんどん見て行こうといった所存。

 

それから「シックス・センス」を見た。

 

シックス・センス (字幕版)

シックス・センス (字幕版)

  • ブルース・ウィリス
Amazon

 

ストーリーがめちゃくちゃ面白かった。有名だけれど内容を知らない映画の中にこんなに面白いものが眠っているのかと思うと、これまで映画を見てこなかった甲斐があった、これからが楽しみ。この映画は別にホラー映画というほど怖いわけでもないし、怖がらせるのがメインでもないのだけれど、幽霊が出てきたおかげで緊張感をもって画面に集中することができた。見た日には怖い夢を見たわけではないが夜中に目を覚まし、つかの間の覚醒の間に「シックス・センス」のことを思い出して、ちょっとだけ不安になった(でもすぐに寝れた)。物語終盤で出てくるアーサー王の劇のシーンではPeeping Lifeを思い出した。

 


聖剣!?エクスカリバー 前編 Peeping Life-World History #12

 

イギリスでのアーサー王の物語って、日本でいうところの桃太郎くらいのものなのか、それとも結構事実に寄ったものとして受け入れられている古事記序盤ぐらいのものなのか、どっちなんだろう(Peeping LifeはWorld Historyって言っちゃってるけど)。夏目漱石が「薤露行」でアーサー王の物語を小説にして書いていたけれど、文章が難しくて挫折したので、いまいちアーサー王の物語を知らない。ちょうどいいし、アーサー王を題材にした映画はやってないもんか。

 

YouTubeのホーム画面のおすすめにシュガーベイブのアルバム「SONGS」の50周年アニバーサリーのトレーラーが出てきて、何回祝うねんと思った(トレーラーのヤマザキマリのイラストを見て、そういえば文芸誌の新潮のコロナ禍日記リレー特集で、ヤマザキマリが山下達郎・竹内まりや夫妻とご飯を食べに行ったって日記を書いていたのを思い出した)。

 


SUGAR BABE「DOWN TOWN」オフィシャル・トレーラー

 

とか思って調べてみたら、30周年、40周年、そして今回の50周年でまだ三回目のアニバーサリーだった。勝手に5年周期ぐらいで祝ってると思い込んでいたけど勘違いだった。とはいえ、節目を迎えるたびに掘り返されてしかるべきと思うほど、シュガーベイブの、特に「DOWN TOWN」は聴いていて特別な高揚感を覚える良い曲。イントロのギターの音色は、聴いただけでたまらない気持ちになる。自分は大学生のころにシュガーベイブの「DOWN TOWN」を聴きながらやたらと夜に散歩をしていた時期があって、今でも聴くと当時の本当に何か良いことがありそうみたいな、謎の期待感を抱きながら歩いていた感覚が思い出される。「DOWN TOWN」は色んなアーティストにカバーされていて、数年前には自分の好きなバンドであるthe band apartもカバーしていたけど、やっぱりシュガーベイブの原曲のほうが良かった。ほんでもって自分は、奇妙礼太郎の「たまらない予感」を「DOWN TOWN」と似たような聴きごたえの曲として、勝手に同じフォルダに入れている。

 


奇妙礼太郎 - 「たまらない予感」 Official Music Video

 

タイトルの「たまらない予感」が、自分が「DOWN TOWN」を聴いて散歩しているときに抱く感情だからっていう単純さ。こっちの曲はだいぶアダルトな感じだけれど。自分は社会人になってから、土曜日の夜よりも金曜日の夜のほうが好きになった。これも単純に、金曜日の夜のほうが週明けの出勤日から遠い距離にあるから。